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アクティブラーニング
アクティブラーニングは、「教授から学習へ」という世界的な大きな教育改革の流れの中で、高等教育のみならず中等教育においても導入が推奨されている教授・学習法である。アクティブラーニングは、日本では以下のような定義がある。

「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」(中央教育審議会答申、『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて』、2012、p.37)

「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う。」(溝上、2014、p.7)

上記で紹介した他にもアクティブラーニングの定義は多く存在し、さまざまな論争がある。その要因として、アクティブラーニングの重要な要素である「学習者の能動性」が外部から判断しにくく、またそれを外化したり評価したりする手法も開発途上にあることが考えられる。いずれにしても、アクティブラーニングは教授・学習の形態を示すものであり、授業そのものの内容や質は、教員の授業設計能力や学習者の学習状況を的確に把握して改善しようとする姿勢にかかっていることは言うまでもない。

<参考・引用文献>

  • 中井俊樹編著「シリーズ 大学の教授法3『アクティブラーニング』」、玉川大学出版部、2015
  • 溝上慎一『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』、東信堂、2014
  • Barr, R. and Tagg, J.(1995) From Teaching to Learning: A New Paradigm for Undergraduate Education. Change, 27(6), pp.12-25
  • Bonwell, C. and Eison, J.(1991) Active Learning: Creating Excitement in the Classroom, Jossey-Bass.

[文責:井上史子]

シラバス
平成7年度我が国の文教施策「新しい大学像を求めて-進む高等教育の改革-」の中で、シラバスの作成・公表の効果について次のように記述されている。

「学生に授業の内容について事前によりよく認識させ、計画的・体系的な授業科目の選択、積極的な授業参加を促すことが期待される。また、教員に対しては、 言わば授業の設計図であるシラバスを公にすることを通じ、自己の授業内容の一層の向上に向けての努力や体系的な教育指導の充実に向けての教員相互の連携・ 協力を促進することが期待される。」さらに、「それが単なる資料の作成・公表にとどまることのないよう、今後、シラバスの内容の充実はもちろん、シラバスで指定された参考文献などの大学図書館における配備や、科目選択に当たっての十分なカリキュラム・ガイダンスの実施、さらには オフィス・アワーの設定など、シラバスの有効活用に向けて各大学の一層積極的な取組が期待される。」とまとめられている。

また、平成20年4月に施行された大学設置基準等の一部改正では、「卒業時における学生の質を確保する観点からは、教員がシラバスを作成し、その中で、あらかじめ学生に対して各授業における学習目標や、その目標を達成するための授業の方法・計画等を明示するとともに、成績評価基準や卒業認定基準をあらかじめ提示し、これに基づき厳格な評価を行うことが必要であり、これを各大学に求めるものである。」として、シラバスの中で成績評価基準の明示化がより強調された。諸外国での取組等も参考に、シラバスがもつ機能と役割をまとめると以下のようになる。

●学生にとっては、
・計画的、体系的な科目選択のための情報を得るツールの一つ
・学習における「成功」を助けるもの
・教員とのコミュニケーションツールの一つ  など

●教員にとっては、
・自身の大学教員としての教育理念や専門性を示す機会
・自身の教育活動を振り返り、改善を図る(FD)
・授業で起こりがちな「トラブル」を減らす方策(学生とのコミュニケーションツールの一つ) など

●大学(学部/学科等)にとっては、
・学生、保護者、企業など、ステークホルダーへの説明責任を果たす
・組織的、体系的な教育活動を示す証拠
・大学内で教育理念の共通理解を図る(大学のガバナンス)など

[文責:井上史子]

反転授業
反転授業(Flipped Classroom)と反転学習(Flipped Learning)の二つの表現があるが、両者は同じものである。前者がアクティブスペース(教室)での活動のことで、学生が学び、議論、探究する場所を指すのに対して、後者は立場(教員と学生の役割)を反転させることを意味する。

反転授業はブレンド型学習と呼ばれ、教室における対面授業にオンライン教育やその他の教育方法を組み合わせた教育方法である。これには大きく二つのタイプがある。一つは、完全習得学習型と呼ばれるもので、中間層の学生の点数の底上げや落ちこぼれの救済を目的としたもので「復習」に重点が置かれる。もう一つは、高次能力育成型と呼ばれるもので、事前準備学習、対面授業、PBL /TBLなどを活用した高度なレベルのもので、学生の「予習」に重点が置かれる。

反転授業を導入すれば、アクティブラーニングが加速でき、学生のやる気を引き出すことができると考えるものもいるが、これはあくまでもツールに過ぎない。 反転授業においては、教員による「対面授業」が重要であることを看過してはならない。反転授業の導入を困難にしている要因として、教員の経験不足や技量のほかに、リスクマネージメント(危機管理)的な能力が求められることがあげられる。また、事前にクラスでの授業シミュレーションを行い、周到な準備をするなど、講義よりも負担が大きい。学生に事前準備学習させることで、教員の負担を軽減するものではない。また、反転授業においては、学びの責任が学生にある。したがって、学生の学びが能動的になる。

<参考文献>
船守美穂「主体的学びを促す反転授業」『リクルートカレッジマネジメント』 (185/Mar.-Apr. 2014)
船守美穂「反転授業へのアンチテーゼ」『主体的学び』第2号(東信堂、2014年)
土持ゲーリー法一「反転授業はアクティブラーニングを加速するか~帝京大学での試み」『主体的学び』第2号(東信堂、2014年)

[文責:土持ゲーリー法一]

ファシリテーション
ファシリテーション(Facilitation)とは、会議、ミーティング、授業等の場で、人々の活動が容易にできるよう支援し促すことを指す。話の流れ を整理や参加者の認識の一致の確認を通じ、合意形成や相互理解をサポートし組織や参加者の活性化、協働を促進させる。 この役割を担う人をファシリテーター(Facilitator)と呼ぶ。

ファシリテーターは、段取り・進行・プログラムデザインといった、活動の目的を達成するための外面的なプロセスだけでなく、チームのメンバーひとりひとり内面的なプロセスに関わることが求められる。チームメンバーの主体性を重んじ、「待つ」「見守る」といった姿勢が基本となり、十分な観察の上、必要に応じて介入をすることが重要である。

[文責:森玲奈]

プロジェクト型学習(PBL)
グローバリズムと情報化によって、現代社会は刻々と変化している。大学審議会は1998年6月に答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」を発表 し、「課題探究能力の育成」という新しい教育を設定すべきとした。学生が自ら主体的に課題探究する力を育成するためには、大学も従来の教育方法を見直さねばならない。このような教育ニーズに応じる方法として注目されているものの1つが、「プロジェクト型学習(Project-Based Learning:PBL)」である。和訳では「課題解決型学習」とされ、座学(講義形式教育)と一線を画するものと考えられている。PBLは、デューイ やキルパトリックらの教育哲学を源流とするプラグマティックな教育方法であるが、高等教育への導入は1960〜1970年代に北米で実施された医学教育に遡る。各分野におけるPBL導入および普及の背景には、従来型の教育体系では対応できない課題に対し、臨床的実践を通じ、常に新しい知識と技法を教育せざるを得なかったという状況がある。PBLは、「複雑な課題や挑戦に値する問題に対して、学生がデザイン・問題解決・意思決定・情報探索を一定期間、自律的に行い、実際的な制作物もしくはプレゼンテーションを目的としたプロジェクトに従事すること」と定義される(Jones 2000)。

PBLが成立するための条件としては(1)プロジェクトがカリキュラムの中心であること、(2)学問の中心概念を取り扱う問題に焦点化されていること、 (3)学生の構成主義的探索が含まれていること、(4)ある程度学生主導であること、(5)学校的でなく実際的(real)であること、の5つが挙げられる。 PBLでは、授業自体が「プロジェクト」としての真正性(authenticity)を持っていることが重要と考えられる。

<参考文献>
Jones, W. T. (2000) A review on project based learning. San Rafael, CA: Autodesk Foundation.
http://www.bobpearlman.org/BestPractices/PBL_Research.pdf
(参照日2014.05.21)

[文責:森玲奈]

ラーニングコモンズ
ラーニングコモンズは、米国の教育改革の進行の中で登場した新しい「学びのための場所」のことである。多くの場合、アクティブラーニング、協同学習、 ICTの利用に対応し、グループでアクティブにICTを活用して学ぶといった学習スタイルを可能にする。また、こうした授業外の能動的な学習を支援するために必要なリサーチ、スタディスキル、ライティング、ICT活用などに対する人的支援がワンストップで提供される場でもある。さらには、社会的でインフォーマルな学び、人はリラックスしているときに最も創造的になるといった多様な学習観を取り入れ、ソファなどが置かれたリラックスできる空間やカフェが併設されることも多い。これらの様々な学習観と学習スタイルに対応するため、かつ大学における授業外の学習が行われる中心的な場所として、学生数に応じた大規模なものが設置される傾向にある。

ラーニングコモンズの空間のデザインには大学や教員の学習観が投影される。米国では、学生にとって魅力的な空間とするために学生に対するフォーカスグルー プやインタビューを行い、どのような家具が欲しいか、どのように学習したいかなど、学生の視点をデザインに反映させた事例も多い。一方、ラーニングコモンズがある意味適切に活用されるには、誰をも惹き付けるような空間的な魅力はもちろんのこと、教員が授業内外の教授と学習をいかにデザインできるかが鍵となる。授業外に、学生がアクティブに、グループで、最先端のICTを活用して、活き活きと学習するためには、そうした学習経験を要求する課題をデザインできる教員、それらの学びを支援するスキルを持つスタッフが必要となる。ラーニングコモンズが正しい文脈において活用されるためには、大学が新しい学習観を理解し、教員が学習をデザインでき、大学の学習支援のリソースが再配置されるなど、大学の教育改善が不可欠である。

[文責:上岡真紀子]

ラーニング・ポートフォリオ
文部科学省は、これを学修ポートフォリオと称して「学生が、学修過程ならびに各種の学修成果(例えば、学修目標・学修計画表とチェックシート、課題達成のために収集した資料や遂行状況、レポート、成績単位取得表など)を長期にわたって収集し、記録したもの。それらを必要に応じて系統的に選択し、学修過程を含めて到達度を評価し、次に取り組むべき課題をみつけてステップアップを図るという、学生自身の自己省察を可能とすることにより、自律的な学修をより深化させることを目的とする。従来の到達度評価では測定できない個人能力の質的評価を行うことが意図されているとともに、教員や大学が、組織としての教育の成果を評価する場合にも利用される。」(用語集)と説明し、「学習」ではなく「学修」と位置づけ、学修ポートフォリオを授業や単位、そして成績の一環としてとらえている。ラーニング・ポートフォリオには授業単位、学年単位のほかに、最近では卒業論文に代わって卒業ポートフォリオが注目されている。

ジョン・ズビザレタはその重要性を3つの要素(領域)で紹介している。すなわち、リフレクション(省察)、ドキュメンテーション(証拠資料)、そしてコラボレーション(共同学習)/メンターリングで、それぞれが学習を高めるが、3つが重なったところを「ディープラーニング(深い学び)」と位置づけている。 ラーニング・ポートフォリオの意義は、学生の学習プロセスを振り返させることで以下の6つの質問項目が効果的であるとしている。

  • (1)何を学んだか、なぜ学んだか。
  • (2)いつ学んだか、どのような状況で学んだか。
  • (3)どのように学んだか、どのような学習者であると思ったか。
  • (4)何を学び、学習計画や将来計画にどのようにつながったか。
  • (5)学習したことで知的・倫理的成長にどのような違いがあったか。
  • (6)学習したことがどのように役立ったか。

<参考文献>
John Zubizarreta, The Learning Portfolio: Reflective Practice for Improving Student Learning (Bolton, MA: Anker, 2004)
土持ゲーリー法一『ラーニング・ポートフォリオ~学習改善の秘訣~』(東信堂、2009年)

[文責:土持ゲーリー法一]

ルーブリック
ルーブリックとは、「ある課題をいくつかの構成要素にわけ、その要素ごとに評価基準を満たすレベルについて詳細に説明したもの」である(※1)。ルーブ リックは、通常マトリクス形式で表現され、評価の観点(通常、課題の到達目標)、評価の尺度(例えば、レベル1からレベル3、0点から2点、優・良・可など)と、評価の基準(それぞれのレベルで求められるパフォーマンスの詳細な内容)によって構成される。ルーブリックは、客観テストでは評価が難しいとされる「思考・判断」「関心・意欲」「態度」「技能・表現」など、いわゆるパフォーマンスを評価するのに適しており(※2)、例えば、レポートやプレゼンテーション、グループ活動などを評価する際に用いられる。

ルーブリックを使用するメリットは、さまざまある。大きく分けるとするならば、
① 評価の基準を示しそれらに基づいた評価を行うことによる厳格で公正な評価の実現
② ルーブリックを学生や教員間で共有することによる学習成果についてのコミュニケーションの促進
③ 上記の活動を通じた授業やプログラムの改善
の3点になるだろう。

実際のルーブリックの例として、スティーブンスの『ルーブリック評価入門』(※1)には、さまざまなルーブリックの例が紹介されている。日本で開発されたものについては、日本高等教育開発協会がルーブリックバンクを設けている(※3)。また、カリキュラム評価の際に参照可能なものとして、全米カレッジ・大学協会が、VALUE(Valid Assessment of Learning Undergraduate Education)ルーブリックを公開している(※4)。

  • ※1 ダネル・スティーブンス、アントニア・レビ『大学教員のためのルーブリック評価入門』佐藤浩章監訳、玉川大学出版部、
    2014年。
  • ※2 沖裕貴「大学におけるルーブリック評価導入の実際」立命館高等教育研究、14号、2006年、71-89頁。
  • ※3 日本高等教育開発協会.ルーブリックバンク http://jaed.jp/rubric/
  • ※4 全米カレッジ・大学協会.VALUE Rubrics https://www.aacu.org/value-rubrics

[文責:上岡真紀子]


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